ゆかりんちょのブログ

観劇が趣味のジャニオタが気が向いた時だけ書くブログです。

梨田喜久枝の本当の凄さ〜優秀病棟素通り科を観て〜

 劇団山田ジャパン【優秀病棟 素通り科】を観劇してきました。

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 日頃大抵のチケットをノリと勢いと推しへの愛だけで取りがちな私にしては珍しく、この作品のチケットを取ろうか取るまいかギリギリまで悩みました。

 

  福ちゃんがお芝居とはいえ、未遂で終わると言えども飛び降り自殺を試みる、というところから始まる物語を受け止めきれる気がしなかったからです。

 

 しれっとカミングアウトしますが、私は過去に精神的に疲れ切ってしまい、生きることを諦めるような行動を複数回とったことがあります。一生消えないであろう傷を抱えて生きています。

 

 今はもう、それなりに元気になっていますが、あの当時のことを思い返す勇気はなく、あの時の自分をなかったことのようにしています。

 

 優秀病棟素通り科を見ることで、当時のことを思い出してしまうかもしれない、思い出したときに受け止めきれなくてあの頃に戻ってしまうかもしれない、そんな恐怖がありました。

 

 正直なところ、この作品を見た結果、当時の自分のことが頭をよぎる瞬間があったし、息が苦しいような胸が締め付けられるようないつか感じていた苦しさの追体験をほんの少ししました。

 

 しかし、帰り道に鬱々とすることはありませんでした。

 

 飯塚哲人を救った梨田喜久枝の言葉が、私のこともまた救ってくれたからです。

 

『幸せのバリエーションなめんな』

 

 そう強く言いきれる彼女の、たくさんの言葉が当時を思い出して暗くなりそうだった私の心だけでなく、当時の私そのものさえも救ってくれたように感じました。

 

喜久枝さんのような人間になりたい。

 

彼女の心のキャパシティーの広さに憧れます。 

 

 まず彼女自身の置かれている環境。決して恵まれているとは言い難い生活に対して、悲観する素振りが全くありません。

 

 パワハラで鬱になり辞職した旦那さんを支え、合格していた大学への進学を諦めるしかなかったことを受け止めきれない娘も支えて…

 

 簡単な言葉で言ってしまえば『しんどい』毎日、と多くの人が思うような暮らしです。

 

 それでも彼女は決して自分のことを『不幸』だとは言わないのです。

 

不幸だと呼ぶから、不幸と名付けるから。

 

結局のところ、自分が自分を不幸にしているのかもしれない。

 

彼女の生き方にそう気付かされます。

 

 また、彼女の人生を垣間見た飯塚の同僚が、また飯塚自身が、梨田喜久枝を気の毒がり哀れんでも、怒ることも否定することもしない。その度量の広さは、並大抵の人には真似出来ないと思います。

 

 だって私だったら『勝手に不幸って決めつけんなよ💢』って怒ってるもん(笑)

 

 人に何を言われようと揺らがない強さ、見習いたいです。

 

 そして、梨田喜久枝の1番の凄さ、それは徹底的に話を聞けること。

 

 本気で話を聞く、人と向き合い受け止めるという行為は、とても疲れることです。

 

 また、ただ話を聞く、聞いて全てを肯定するというのは案外難しいものです。人はアドバイスをしたがる生き物だから。

 

 でも喜久枝さんは飯塚哲人の話を聞いて、1度も否定しなかった。否定せずにひたすら、飯塚が気付いていなかった幸せを拾い上げた。

 

 喜久枝さんに拾い上げてもらった幸せを、飯塚は間違った方向に持っていってしまいそうになったけれど。

 

 それを踏みとどまらせた『幸せのバリエーションなめんな』、喜久枝さんだから言える言葉だし、喜久枝さんが言った言葉だから飯塚哲人が踏みとどまる理由になったのだと思います。

 

 今はまだ自分のことでいっぱいいっぱいになってしまう私ですが、人生を諦めそうになった頃に比べたら幸せを拾い上げるのが上手になったなと気付きました。

 

 ここまで成長してきた私の次の目標は、かつての私のように、この作品の飯塚哲人のように生きることを諦めそうになっている人に手を差し伸べられる喜久枝さんのような人になることです。

 

 この作品に出会えて、人生が明るくなった気がしました。

 

 福ちゃんの『下を向いている人が斜め下を向ける作品を』の言葉通り、目線が上がる素敵な作品に出会えて、良かった。

 

 福ちゃんのファンじゃなかったらきっとこの作品には出会わなかったし、そうしたら過去の自分の重さを抱えて生きていく中で今よりも苦しむこともあったと思います。

 

 本当に推しに感謝。

 

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 もっと時間が経ってから、またこの作品振り返りたいな…